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究極の映像作品  これを超えるもの未だ無し!

2012年、もう大丈夫だろうという空気になってきていますが
それでも内容が内容だけに
なんとしても今年中にこの映画のレビューをしておきたかった。
何しろ公開からだいぶ経ってるから、出来るだけサラっと書きますね。

アポカリプト / APOCALYPTO

2006年 アメリカ映画 アイコン・プロダクション&タッチストーン製作

監督:メル・ギブソン
製作:ブルース・デイヴィー  メル・ギブソン
脚本:メル・ギブソン  ファラド・サフィニア
キャスティング;カーラ・フール
編集:ジョン・ライト
プロダクションデザイン:トム・サンダース
メイキャップ:アルド・シグノレッティ
衣装:マイェス・C・ルベオ
撮影:ディーン・セムラー
音楽:ジェームズ・ホーナー

出演:ルディ・ヤングブラッド  ラオウル・トルヒーヨ  ヘラルド・タラセナ

ヨーロッパ人に発見される以前
マヤ文明が栄えていた頃のメキシコ、ユカタン半島。
森の中で平和に暮らす部族の村が傭兵集団に襲われ
村人達はなす術もなく、捕らわれてしまう。
族長の息子ジャガー・パウも例外ではなかった。

連行されてきた都で女は奴隷として売られ、男は生贄として処刑される。
日食が起こり運よく斬首を免れたジャガー・パウだが、次に待っていたのは
捕虜を獲物とした死のゲームだった。しかし、ここでもジャガー・パウは生き延びた。
ジャングルに逃げ込んだ彼は「恐れるな」という父の教えを思い出し、たった一人で立ち上がる。
追うものと追われるものの立場は次第に入れ替わり、狩人と戦士の技が激突する。
最後に勝ち残るのは一体、誰だ?!

侵略、殺戮、復讐、闘争・・・・・物語の中で繰り広げられるものは
まさに人間が繰り返してきた歴史の縮図そのもの。
反面、家族愛や部族の尊厳なども描かれている。

単なるアクション映画ではなく
人間論、文明論をも考えさせうる一作だ。




人にとって特別な映画って色々だと思います。

アクション作品から映画に入った僕は
映画の醍醐味=アクションの興奮
映画ファンになったばかりの頃はそう思っていましたし、今でもそういう部分はあります。
そんなわけで一番好きなジャンルはアクション大作になってしまうんですが
見続けていくうちに特別な作品が一本は見つけると思います。
単純に”面白かった”、”好きだ”以上の
映画を超えた映画というか、やべえよこれ、みたいな感覚。

自分にとっては、まず「グラディエーター」と「ロード・オブ・ザ・リング」がきました。
歴史上、存在した世界と架空の世界、舞台に違いはあれど
やっぱりこの二つは鎧と剣のエピックムーヴィーの双璧だと思います。
この後、パッと思いつくだけでも似たジャンルの大作では
「ラストサムライ」「キングアーサー」「トロイ」「アレキサンダー」「キングダム・オブ・ヘブン」
と続きました、超えたものは何一つ無かった。

ように思われましたが、ついに世に出た「アポカリプト」

興行的にはそこそこ利益が出たかな程度のヒットで映画史に残るほどではないです
しかし作品そのものは「グラディエーター」「LOTR」に二代巨頭に匹敵するか
むしろ超えていると思います。

傑作足りえた要素を考えますと

まずアクションシーンの臨場感、リアルなだけじゃなく、見やすい
今から約10年前、「ボーン・アイデンティティー」の
本格的な近接戦闘を取り入れた格闘アクションが評判となりました。
ついでに激しく揺れるカメラワークもトレンドに。
まるでその場で、自分が戦ってるような感覚は、確かにリアルでしょう。
ただ、見やすくはねえよなあ、純粋に映像として見ると。
(もしや、「ボーン」のアクション見づらいと思ってるの俺だけ?)
その点、「アポカリプト」は役者の動きをカメラできちんと収めていて
寄りすぎても、ブレすぎてもないし、早回しやスローモーションもそれほど目立たない。
ゴチャゴチャの編集でよく分からないなんていうのもナシ。
アクションは迫真かつ、キャラクターがどう動いてるのかがわかりやすい
という点で観客に親切な作り。

ストーリー展開も非常にシンプルで余計なものがありません。
そういうものにこそ根本的な演出力が浮き彫りになるんだと思います。
悪役も凶悪、狂暴、憎たらしい、しぶとい、おまけに強いときてまして
こんな連中をどうやって主人公が倒すのか、自然に肩入れできてしまう。

シンプルといえば、この作品の登場人物はちゃんと名前があるんですけど
見てる間はほとんど覚えれません。でもメイクとかの特徴で記憶に残るんですね。
というか台詞をなくしても、ちゃんと話が分かりそうなのが凄い。
映像で魅せる力、というんですかね。

史劇におけるグロ描写アリの合戦シーンは現在では当たり前になりましたけど
それを最初にやった一人が「ブレイブハート」の頃のメル・ギブソンでしょう。
しかし、この「アポカリプト」では馬や剣、歩兵、ましてや銃も車も一切ありません。
鬱蒼としたジャングルのなかの少数人数による逃走と追跡
下手したら物凄く退屈になってしまうだろう題材なんですが
そこは緩急自在、静寂とショックを巧みに操るギブソン演出の真髄が冴え渡ります。

ゲリラ戦を描いた作品なら他にもたくさんあるけど
先住民だけの戦いというのを、これだけの迫力で描いたものはメジャー作品では
今のところ例を見ませんし後続の作品にも少なからず影響を与えたと思いますね。

パッと思いつくのは「ランボー 最後の戦場」ですね。
こじつけるならば「インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国」の
アケトーの部族もそれぽかった

また、この映画は公開当時、残酷すぎると物議をかもしました。

どれくらい言われたかというと

”コイツはくせぇー!暴力と血の匂いがプンプンするぜぇー!
こんなグロは見たことがねえほどなー!!主題のために必要な描写だと?
違うねッ!コイツは生まれついてのバイオレンサーだ!”

ちょっと誇張してしまいましたが、大体こういう内容でしたね。

またマヤ民族の描き方が野蛮すぎるとか
スペイン軍の虐殺行為を正当化しているという批判もたくさんありました。

これに対して僕なりのフォローをします。

原住民の描写は、敵との戦闘では当然血も出ますけど
風俗や生活の部分では特に偏りはなかったと感じています。
結局、僕らが想像する先住民の世界ってこういうイメージに行き着くんじゃないでしょうか
子供の頃、漠然と想像したアマゾンの世界が完璧に再現されています。

専門の研究者が見るとさすがに違和感はあるでしょうけど
タイムトラベルして当時の世界をそのまま映すなんて出来ませんしね。

それとラストシーンで主人公は文明からなるべく遠くへ去ろうとしています。
恐らく争いの予感を本能的に感じ取ったんでしょう。
メル自身が熱心なクリスチャンだと有名なので
宣教師と十字架も、意味深に写りますし、真意のほどはわかりませんが。

白人のキリスト教徒メル・ギブソンから見た先住民。
それはあくまで彼の視点を通しているわけで、実物とは違うものかもしれない
ただ敬意はちゃんとあったと感じるけどね

森で展開する戦いっていう点では、「もののけ姫」にも通じる部分はあります。
ただ「もののけ姫」は”自然のなかで人間はどう生きるか”っていうのを描いてたと思うんですけど
「アポカリプト」はあくまで人間中心の話でしたね。人間同士の泥臭い争い。

大体、途中で主人公、”ここは俺の森だ!”と言ってますし。
”いつから森はお前の所有物になったのだ?”とオッコトヌシ様に怒られそうな台詞です。
ですが自然を敬ってないというわけではないのです。
彼、というか彼らは森の神への畏怖を持ち続けている、はずなんです。
ただ、その神様が実際に姿を見せて、奇跡を起こす、というわけではないのでね。

村で平和に暮らしていたのに、一夜明けたら村は襲われ一族全滅、
この壮絶な体験を経て彼が何を背負ったのか、それを考えると非常に共感できる台詞

仲間をからかって遊んでた冒頭とは最後は全く違う顔になっています、主人公。
ってか最初はとんでもねえジャイアンだったな、コイツ

そういえば「もののけ姫」は猪神の暴走で始まりますが
「アポカリプト」は猪に少し似たバクを狩るシーンで幕を開けます。
偶然とは思いますが、ちょっと興味深いですね

日本ではちょうど「300」と同じ日に公開されて、それともよく比較されてました。
完成された肉体美やスタイリッシュな映像という点でも
「300」のほうが一般ウケしやすいでしょう。
「アポカリプト」は精神がマッチョというか、見た目ではない強さ
戦士とは 父親とは 男とは そういうのがビリビリ伝わってきますね。 

善玉だけでなく、悪役のボスも息子を持つ父親です。
村の襲撃の際、額に一撃を喰らい、瞼が腫れあがっているボスの息子。
父親は応急処置で治療しますが、そのやりかたが凄い。
腫れた部位の横辺りを石のナイフで切りつけ、鬱血した血を出すのだ。
どす黒い血がダラ~と流れるのですが、腫れはたちまちひいてしまう。

新しい傷で持って古い傷を直す。何だかすごく印象に残っています。

このボス、捕虜には冷徹だけど、すごく息子思いで
人狩りはきっと彼には悪いこと間違っていることではなく、正しいことなんでしょうね。
それを息子が受け継ぐことも誇りに思っている。

深い愛情と残虐性を同時に持つことができるのは人間の本質なのかもしれません。

そして肝心なことについて。この映画が残酷すぎるという批判です。

僕も黒いジャガーに顔面をグチャグチャにされる場面と
後頭部に刺さった矢が口から出る場面はきつかったですけど、それも一瞬で終ったりするし
本当に残酷な部分は長々と見せたりしないというのは、観客には親切なんじゃないかと感じました

「グラディエーター」の監督リドリー・スコットが音声解説で
”敵の剣闘士の首を刎ねても仮面を被ってるから顔は見えない。残酷には見えないだろ?”
て語ってまして、おいおいって思いましたけど、結構的を得ています。

ただ暴力映画を暴力的だと批判するのは本来、正しい反応のはずなんです。
現実の暴力はどうやっても醜い結果をもたらし、不快感を残すものですから。
ゆえに残酷すぎると嫌悪感を持たれた、この作品は暴力のありのままの姿を描いたとも言えるでしょう。

娯楽が社会に与える影響は~とか偉そうに言うつもりないし、権利もないですが
今は暴力をかっこよく描きすぎたりユーモアを交えて面白おかしく描く
そんな作品が多すぎる、増えすぎてると思いますね。

そういう”やりすぎ”への批判は
まさにメル・ギブソン監督作品「パッション」「アポカリプト」に集中しましたけど
この2作品で描かれるってことって、人間が実際してきたであろうことなんですけどね。

まぁ過激なアクション映画で面白いのたくさんありますし、実際、僕も楽しみましたよ。

暴力描写が得意な監督で評価が高い人はたくさんいます。
スコセッシ、タランティーノ.....スピルバーグも結構エグイの見せます。
その人たちはただ刺激を追及するだけではない、明確なヴィジョンを持ってるんだと思います。

その点はメル・ギブソンも同じ。

過激だ残酷だと非難するのも最もだけど、
ギブソン監督がそうまでして伝えたいもの表現したいものは何なのか

というのにも目を向けて欲しいと思いうんです。

そして、僕はユーモアで誤魔化したり
スタイリッシュに魅せたりってことはしないメルの演出が好きですね。

さて、最近でも「キック・オーバー」などに出演しているメルだが
今後、第一線に返り咲けるかは非常に微妙、というのが現実
もしかたしたらこのまま隠遁するのもしれない、それをするだけの資産は余りあるほどだろう。

ただ引退するにしてもあと一本は監督して欲しい。
悪党とは言え子供が殺しをするアクション映画が人気という
風潮が平気でまかり通りつつあるなか
本物の戦う男の映画というのを見せて欲しいね。

実際、ヴァイキングを題材にした作品を企画していました。
"BERSERKER"なる仮題を付けられたこの新作は監督メル・ギブソン、主演レオナルド・ディカプリオ
という布陣で準備されていましたが、ディカプリオが降板し頓挫しました。

まぁ渦中の人との仕事を避ける、というのは普通の感覚なので仕方ないですが。
ただメルは諦めておらず、現在、脚本のリライト中だという。(題名はもう変ってるかもしれない)
主役は誰になるのかなぁ、今が旬でヴァイキングが似合う人っていったら
そりゃークリス・ヘムズワースで決まりでしょう。

個人的な見解ですが、人種差別云々、DV云々より
メル・ギブソンの映画作りの姿勢が危険視されて干されたような気がする


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No title

バーンズさん、こんばんは。

『アポカリプト』は途中までは観たのですが、
その後都合があわなくてそのままになっていました。
バーンズさんの記事を読んだらちゃんと最後まで観てみたくなりました。


>日本ではちょうど「300」と同じ日に公開されて、それともよく比較されてました。
なぜか私は「300」と「アポカリプト」を取り違えて覚えていた時期があったのですが、同じ日に公開だったのですか。
なんとなく自分の間違いが納得できました(^^;

>まさにメル・ギブソン監督作品「パッション」「アポカリプト」に集中しましたけど
>この2作品で描かれるってことって、人間が実際してきたであろうことなんですけどね。
「パッション」も観ましたけど、ブログを始める前だったので記事を書いていません。
痛々しくって目をそむけたくなりましたが、確かに人間がした事なんですよね・・・。
これもいつか再見してみたいです。
メル・ギブソンって、すごい作品を作る人ですよね。


少々早いですが、今年もお世話になりました。
来年もよろしくお願いいたします。

マミイさん、こんにちは

「300」も「アポカリプト」も、裸体の男が戦って、故郷を守ろうとするっていう
ストーリーは似てますからね~(笑)

>痛々しくって目をそむけたくなりましたが、確かに人間がした事なんですよね・・・。

信者目線なのかもしれませんが
ホラーやアクション映画の残酷シーンと根本的に違う部分はここだと思います。

メルは役者としても好きなんですが、それ以上に監督として好きですね
本当にもう一本作ってほしいなあ......
プロフィール

バーンズ

Author:バーンズ
2010年4月からブログ始めました。
1985年生まれの北海道住まい。

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