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鑑定士と顔のない依頼人

鑑定士と顔のない依頼人

2013年 イタリア映画

原題 [ LA MIGLIORE OFFERTA ]
英題 [ THE BEST OFFER ]

監督・脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ
製作:イザベラ・コクッツァ  アルトゥーロ・パーリャ
撮影:ファビオ・ザマリオン
プロダクションデザイン:マウリツィオ・サバティーニ
衣装:マウリツィオ・ミレノッティ
編集:マッシモ・クアッリア
音楽:エンニオ・モリコーネ

出演:ジェフリー・ラッシュ  シルヴィア・フークス  ジム・スタージェス  ドナルド・サザーランド


この作品はいわゆる誰でも知ってる大ヒット作ではないと思いますが
映画好きの方々には語り草のようになっている感じですよね

検索したら”鬱展開”、”かわいそう”、”後味悪い”、”胸糞胸糞アンド胸糞”とか
お、おう…

邦題だけ聞くと、美術鑑定士が何かの事件に巻き込まれるも
ホームズばりの推理力で鮮やかに解決してしまう、みたいなのを僕は連想しましたが

実際は結構生臭い話でしたね


僕は悲しくはあるけど後味悪いというほどではなかったな
ヴァージルは宝物の絵を盗まれはしたけれど犯罪の濡れ衣を着せられたわけじゃないし
財産だって、余生を暮らしていえるだけのものはしっかり残っているはず

まあ金銭よりも数少ない親しい人たちにことごとく裏切られていったってことが大きいんだろう

特にクレアにね(本名はわからないけど少なくともヴァージルにとってはこの名前である)

”どんな贋作にも本物が潜む”という持論は言い換えれば
”偽の愛にも本物の感情が混じってる”ということで
偏屈で、孤独を好んでいるようなヴァージルは、その実、人を信じていたいというか
なかなか青臭い、純情なおじいさんだったのだ

騙しの主犯ビリーは”どんな感情も模倣することができる”と逆のことを言ってますからね
この台詞もそうだし、演じてるのは何せドナルド・サザーランドなんでね
これから裏切りますよと予告してるようなもんですよね

絵の才能を認めてもらえないのを恨んだからこんな詐欺を考え付いたという
ビリーの器が小さすぎるという感想はよく聞きますが
これはむしろヴァージルが長年にわたって
くそみそに貶していたというふうには考えられないでしょうか?

劇中ヴァージルが怒る場面が何度かありますが、結構激しいです
年を経て少しは丸くなっているであろう初老であれですから、若い時はそれはもう、ね
それにヴァージルは天才肌でしょうから、凡人の悩みとかには鈍感じゃないかと
きっと愛のあるアドバイスのつもりで罵倒したのでは

孤児院で育って独学で頑張って大成したと言ってましたが
自分はあくまで努力型だと思いこんでる生まれつきの天才でしょうね、彼は
努力だけじゃ人生どうにもならねえことがあるんだよ
悪戯の罰として職人の手伝いをさせられたとき熟練の技に感動して以来
わざと悪さをして職人のもとに通った、って
その時点でただの悪ガキじゃねーわ

で、ここからは、例の結末の解釈なんですけど

僕はね、あえて一番意地の悪い見方をします

ずばり、妄想だと思いますね

あの機械仕掛け、歯車でいっぱいの店内はまるで
いきなりティム・バートン作品になっちゃったかのようなファンタジー感
前半からオートマタとか、ちょっとファンタジーのテイストはありましたが

あのオートマタの部品にはヴァージルにとっていろいろな思い入れがあるでしょう
あの部品への興味からこの仕事についついのめりこんでいたし
ロバートとの友情、クレアへのアプローチを色々指南してくれました、全部誘導だったわけですけど

あとはリハビリ、まるで宇宙飛行士の訓練のように回転するマシンでしたが
あの物理的肉体的にぐるぐる回ってるのとオートマタの歯車の記憶、それらが交錯して
ヴァージルの脳内であのカフェを作り出し、そこへ行っているのではないかと思います
だから、現実はリハビリしてる最中なんです、で、たぶん、治んない、一生あのまま

僕はね、元来はハッピーエンド派なんですよ
だけどね、この作品に限っては
とことん残酷さを突き詰めた方がかえって美しさを感じてしまうんですよねえ

また、これがどうとでもとれる時系列ですからね~
リハビリを終えて復活して彼女を待ち続ける or 彼女を待ち続けて、精神崩壊して廃人へ
どっちでも通用する

この結末でなくてもちょっと素敵なラヴスト―リーではあるだろうけど
でも、そうじゃないからこそ、この作品は特別なものになっている気がします

エンドクレジットでかかっていた曲



白状しますと、僕はモリコーネって全く思い入れ無いんです
CDも一枚も持ってません
でも、この曲は素晴らしい、陳腐な言い方ですが
悲しみというか絶望というか、そういうものが渦巻いてる

それにしても最近ジェフリー・ラッシュ大変なんだな

ジェフリー・ラッシュ、“不適切な行為”でオーストラリア映画協会会長を辞任

「不適切な行為」で女優から非難…豪俳優ジェフリー・ラッシュ

つい先日まで知りませんでした

過去の行いのせいで人生どん底、リアルヴァージル状態じゃん
しかもこの二つは別件だし、穿り返せばまだまだありそう…

「パイレーツ・オブ・カリビアン」の人気キャラ、バルボッサなど
様々な名作、ヒット作で名演を見せてきた彼はこのまま表舞台から去ってしまうのだろうか?

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バーンズ

Author:バーンズ
2010年4月からブログ始めました。
1985年生まれの北海道住まい。

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