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シンデレラマン

シンデレラマン / CINDERELLA MAN

2005年 アメリカ映画 タッチストーン&ユニヴァーサル製作

監督:ロン・ハワード
製作:ブライアン・グレイザー _ ロン・ハワード _ ペニー・マーシャル
製作総指揮:トッド・ハロウェル
原案:クリフ・ホリングワース
脚本:アキヴァ・ゴールズマン _ クリフ・ホリングワース
撮影:サルヴァトーレ・トチノ
衣装:ダニエル・オーランディ
編集:マイク・ヒル _ ダニエル・P・ハンリー
プロダクションデザイン:ウィン・トーマス
音楽:トーマス・ニューマン

出演:ラッセル・クロウ _ レネー・ゼルウィガー _ ポール・ジアマッティ

1920年代のアメリカ。
人気ボクサーのジェームズ・ブラドックは家族にも恵まれ、幸せな日々を送っていたが
世界恐慌をさかいに運に見放されてしまう。
数年後、日雇い労働者として必死に働くジェームズに
セコンドだったジョーがピンチヒッターの話を持ち掛ける。
二つ返事で依頼を受けたジェームズだが試合結果は彼の逆転勝利だった。
その話題でボクシング界は持ち切りとなり、かつての名選手の復帰に観客は熱狂。
奇跡のようなセカンドチャンスをつかんだブラドックの挑戦が再び始まる。




ラッセル・クロウとロン・ハワードの二作目のコラボ作品です。

家族のために戦うボクサーの実話をオーソドックスかつストレートに描いた秀作ですが
公開時期が悪かったのか興行的にはヒットしませんでした。
その不振の影響かアカデミー賞でも思ったほどノミネートされず
(ノミネ0の「ラッシュ」よりはマシか。あれはホントひどかった)
他にもラッセルが暴行事件で起訴とか、役者も作品もちょっと逆風にさらされてる時でしたね。

本編はスッキリしすぎかなという気もするけど、いい映画です。
主人公のジェームズ・ブラドックは屈強なボクサーである前に、とにかくいい人!
「彼はリングの上でより、むしろ日常のなかでこそチャンピオンであり続けた。そこを描きたかった」
みたいなことを製作者は語っていて、その通りのよき夫よき父よき市民で
それでいて、ただ優しいだけではなく厳しい面も併せ持つ、でも最終的にはやっぱり優しいという
出来すぎ!ってくらいの人格者。

それにしてもロン・ハワードの描く男は魅力的です

他の監督、たとえばマイケル・マンも男の描写が得意ですけど
マンの場合、マン流男の美学を突き詰めすぎて、合わない人には
「意味わかんねえ」「キモ」とか、激しく拒否されてしまう傾向にあります
(僕はマイケル・マンも好きですが)

ハワードはそうではない、これみよがしではなく自然と滲み出る男らしさ。
それを表現するのが上手い。思うに、これは“男として”としではなく“人間として”
そういう観点で見ているから、誰にでも好感が持てる男性を描けるのではないかと感じます

最後の強敵マックス・ベアも印象的で憎たらしいのに憎めない(矛盾してる)やつでした。
試合が終わった後、一声かけて静かに去っていくのが清々しい。
この人を主役にすえても、なかなかのドラマになると思う。
そういえば「シンデレラマン」と「ラッシュ」って主人公の性格がちょうど逆なんだなって気づきました。
生真面目なブラドック→ラウダで傲岸なベア→ハントって具合に。

クライマックスの世界チャンピオン戦を前に妻メイは試合に猛反対。
これは彼女としては当然の気持ちでしょう。

ブラドックは何とか説得します、夢はかなうとか、人生は変えられるとか。

この時の彼は連戦連勝でちょっと調子に乗っていたかもしれません。
子供たちは素直に喜んでくれるし(そりゃーこんなに強くてカッコいいお父さんなら仕方ない)
それに、かつて夢見た世界王者にもう一度手が届くかもしれない。
そこに彼のエゴは全くないのか、って、ないわけがないんです。
でも、そこで「俺の夢なんだから好きにさせてくれ」とは言わないんですよね。
年齢の不安もあるし、何より家族と一緒に生きていきたい。
戦い抜けるのか、自分より若く強い男を相手に無事でいられるのか
そんな怖れと迷いを断ち切ってくれるのは
妻の応援、それに仲間たち。
長年の相棒であるセコンド、波止場の同僚にご近所さん、顔なじみの神父。
そして、同じ貧困から立ち直ろうとする国民。
彼らの期待を全部背負うなんてすごい重圧だけど、逆に彼らみんながブラドックを支えてくれる。

これほど勇気づけられることはないでしょう。

世界チャンピオンとなったシンデレラマンはのちに王者の座を明け渡し、
再びファミリーマンとなって家族と幸せに暮らしました。
享年71歳。

という後日談とともに話は終わります。

一攫千金という名の魔物を追い続ける僕ですが
幸せって普通の日常で十分なのかなってことを思わせてくれる(我ながらクサイこと書いてる)

もっと歳いったときに見たら、また味わいが違ってくるんだろうなあ

もうひとつ書きたいことがありまして、蛇足なんですけど

当時、同じ時期に「チャーリーとチョコレート工場」が猛烈にヒットしていて
「シンデレラマン」は完全に影に隠れていました。

ただの偶然だと思いますが二作品とも、結構似た場面があるのです。

「シンデレラマン」は息子のジェイが肉屋から肉を万引きしてしまう。

「チョコレート工場」はチャーリーが誰かが落としたお金を拾ってそのまま使い、見学券をゲット。

それぞれの対応の仕方は

「シンデレラマン」は店主に返して謝って、なぜそうしたか理由を聞いて
息子の気持ちを汲んだうえで、二度と盗みはしないと約束させる

「チョコレート工場」は見学券をゲットしたけどそれを他人に売れば、いいお金になるから
家計の助けにしようというチャーリーに家族は「滅多にないチャンスなんだから行ってきなさい」
晴れて工場見学に。

「チョコレート工場」やティム・バートンをディスるつもりはありませんし
倫理観や善悪といったものはいろんな形がある。
ジェイもチャーリーも家族を思う気持ちは一緒でそこに優越はない。

それでも盗みは良くない。当たり前ですよね。
そんな当たり前の場面をわざわざ入れてくるなんて、なんて説教臭い作品だ
という批評も見かけました。

ですが、当たり前のことを通し続けるというのは、案外難しいことではないかと
最近つくづく思うのです。
ましてや、劇中で描かれてる、あの時代。

そんなときでも一線は守らなければならない。

青臭いかもしれませんが
そんな青臭い主張をするハワード監督が大好きです

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映画「シンデレラマン」観ました

製作:アメリカ’05 原題:CINDERELLA MAN 監督:ロン・ハワード ジャンル:★ドラマ/スポーツ/伝記【あらすじ】右手の故障や恐慌のため、ライセンスを剥奪されてしまったボクサーのジム。愛する妻メイと3人の子供のため、肉体労働で何とか日銭を稼いでいた。そんなある日、元マネージャーのジョーが一夜限りの復帰試合の仕事を持ってくる。普段スポーツは全く観ない人間なんですが、ボクシ...

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No title

こちらもお邪魔します。
これは大好きな作品なんですが、バーンズさんの記事はうんうんと頷くことばかりで、自分はちゃんと観ていたのか思い返してしまいました。私の記事は映画の内容にあんまり触れてないし!(笑)

>これは“男として”としではなく“人間として”
>そういう観点で見ているから、誰にでも好感が持てる男性を描けるのではないかと感じます

素晴らしい考察です。ストンと納得できて、これからはそれを踏まえて二人の監督の描く男たちを見比べてみたいです♪

>ブラドックは何とか説得します、夢はかなうとか、人生は変えられるとか。
>でも、そこで「俺の夢なんだから好きにさせてくれ」とは言わないんですよね。

実在の方だと知らなければ、できすぎだと思ってしまうかもしれません。
ホント、日常の小さな幸せを大切にしているのが伝わってきて、そういうものこそが掛け替えのないものだと気付かせてくれます。
ハワード監督の人柄と、ブラドックさんの相性がピッタリ嵌ってましたね。
2作品目もありがとうございました♪

Re: No title


> 実在の方だと知らなければ、できすぎだと思ってしまうかもしれません。
> ホント、日常の小さな幸せを大切にしているのが伝わってきて、そういうものこそが掛け替えのないものだと気付かせてくれます。
> ハワード監督の人柄と、ブラドックさんの相性がピッタリ嵌ってましたね。
> 2作品目もありがとうございました♪

ロン・ハワードって実話系の作品が多い監督さんで、まじめで真摯な映画作りがそういう題材に向いてんるでしょうね
監督本人の人間性と取り上げる人物がリンクしているというか
プロフィール

バーンズ

Author:バーンズ
2010年4月からブログ始めました。
1985年生まれの北海道住まい。

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